お前が俺の腕に絡まる度に
俺はお前を突き放す。
笑いながら、そう哀しい眼をするな。
でなきゃ
お前の肌の柔らかさに、漂う甘い匂いに
そのまま、抱きしめてしまいたくなるんだ。
なあルパン。
男って奴はな、そんなに女に振られる姿を
マメに見せたいとは思わんもんだ。
そんなにがに股になって、歩きにくくねえか？
誰に教わったんだ。それが、男の姿だって。
女の服や靴を身につけたお前は
直ぐにはそれを、脱ごうとしない。
ふざけて、おどけて、時間を稼いで。
道化師のお前は求める。
それを見て笑い、呆れ、こき下ろす観客を。
それで諦めがつくっていうのか。
本当は眩しげにお前を見てる、俺や侍の事など知りもしないで。
ふいに、垣間見る。
儚い仕草や、表情。細い声を。
驚いて振り向く俺に、気付いたお前は逃げ出す。
お前にはない長い巻き毛、赤いルージュを引いた女達の元へ。
俺は帽子を深く被りなおす。
お前を見つめる視線を隠すために。
口付けたくなる俺の唇は
いつもペルメルで塞がれる。
でもな。
それがお前の選んだ生き方なら。
王の名を継ぐ者の誇りなら。
俺は一生女嫌いでいるさ。
お前が男として生きている限りは。
お前を傷つける奴は、俺が葬る。
こぼれた心の欠片は俺が拾ってやる。
だから、ルパン
『 オマエモ、 ドコニモ、 イクナ。 』
それが
俺の祈りだ。
なおぞうさんのリクエスト。ルパンの正体が女性だと判っている次元の話でした。「逝かないで」の連作でもあり、「道化師の仮面」の対にもなっています。側に居たいとか願いよりもっと大きな気持ちって何かと考えたら生きていて欲しいという「祈り」かなと思えたので。
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逝かないで〔追記〕
