6
やさしい雨
国境を西へ向かう途中
車を降りて二人は海を見ていた。
小雨が降って来た。
一本しかない傘を次元はさす。
ルパンは寄り添う。
ルパンは次元の傘が好きだ。
寄り添っても、突き放されたりしないから。
濡れないように、次元が肩を抱いてくれるから。
傘さす程もない小雨の中
ルパンは眠ったふりをした。
二人はしばらく黙って、傘の影で暖めあった。
波を弾く雨の音だけが
二人の耳に響いていた。
この話は「逝かないで」後編に続くシーンにもなっています。2005.4.28